中小企業に限らず会社は常にリスクと隣り合わせにいます。前回までにお話しした、キーマンの退社や大量の不良在庫の発生などは、会社内部での問題として事前の対処は可能です。
ところが、得意先の倒産や企業再編による合併による契約の解除など突発事故は、社内の努力だけでは避けられません。
そして、受注の依存率が自社の売上高の数十%を超えるような得意先が、そのような事態に陥った時、中小企業は一気に窮地に立たされます。
■先が見えれば対処の仕方がある
重要な得意先がなくなるような事態が生じたとき、これからの金繰りがどうなるかが分からないと、混乱が生じるだけで、建設的な行動がどれません。
そこで、まず現状の会社の資金繰り状態を少なくとも一年間は見通せるようにすることで対処の入り口に立てます。
ただ、現実的に一年先のことまで見通すのは容易ではありません。特に受注型が多い中小企業は、受注の先行きを確実に見通すことはなかなかできません。
しかし、今後一年間、どれだけの会社維持に資金が必要かはすぐに計算できます。過去の実績を見れば、給与に始まり、金融機関への返済まで、月別の資金繰りの支出面は見えてきます。
そのうえで、そこにまだ継続している顧客からの受注見通しと、材料費や外注費の支出予想を重ねてみると、依存率の高かった会社が無くなることでの資金繰り状況が見えてきます。
厳しい先行きの資金繰りが見えると、今度は会社を維持していくための支出を切り詰めるとともに、金融機関へ返済スケジュールの見直しを要請するとことも可能となってきます。
■リスクに備えて儲けるしかない
多くの経営者が、そのうち環境が良くなれば受注が回復するだろうと期待をかけますが、そのような姿勢では会社は守れません。
会社にとっての「カネ」は人の血液と同じです。「カネ」が回らなくなると突然死もあり得ます。そうならないためにも、儲けた時には内部留保を厚くする、会社が危機の時に備えて経営者が高額の給与をとり何時でも吐き出せるように貯金をする、というような工夫も必要です。
重要な得意先が倒産するような危機に際しても、何を削減するべきかが即断でき、それを即日実行に移せるぐらいでないと中小企業の経営は成り立ちません。
そのためにも、常に自社の資金繰りの一年先を把握し、危機が生じてもどれだけの「カネ」があれば一年間乗り切れるかを掌握しておくべきなのです。
もちろん、支出面での見直しだけでは会社は成長しません。結局、新たな受注を通して儲ける以外に、危機対応はできないのです。